【 電脳空間 】

01. 光源

明かりをください
光当たる場所にはいられないから
せめて

光当たる場所はまぶしくて
光当たる場所は人が多すぎて
私には遠い場所

それでも
私には遠い場所だとしても
私には必要なのです

だから
光をください

光がなければ私は生きてゆけないから

せめて
明かりをください

どんな小さな光源でもいい
一本のロウソクでも
本当に小さな灯火でもいい

だから
明かりをください

02. 携帯

必要ないからいつでも切り捨てられる
それでも捨てない愚かな私

どれだけ携帯が壊れても
私は多分捨てようとしない
それは必要ないものなのに

携帯の中につまったメモリー
必要なことはすべてこの中
失ったら何もできない
愚かな私たち

もう何の役にも立たないとわかっていても
手放したくないのは怖いから?

こんな薄っぺらな機械一つで
繋がっている私たち
繋がりが消えるのは怖いの?

メモリーの中には必要なものも
不必要なものも全部つまってる

そんなに大切なものでもないのに
過去の一つが消えた程度

それでも捨てられない
愚かな私

03. 配置

気に入らない
気にくわない

全部が雑多
全部多すぎる
ごちゃごちゃしすぎて気持ち悪い

どうしてこの世界はこうなのかしら
生まれたときからこうだったかしら
つい最近まで気付かなかったけど

あまりに雑多
あまりにも雑然
いらないものばかり
有益なものは少ししかない

私が世界を作り上げるなら
もっとうまく配置するのに

気に入らない
気にくわない

あまりにも無益なものが多すぎる
必要なもの以外全て取っ払ってしまいなさい

04. 障害

あなたが笑ってくれるなら
僕は何だってしよう

あなたは僕の幸福だ
あなたは僕の光だ
あなたは僕の命だ

あなたが笑ってくれるなら
僕は何だってしよう
それが僕の幸福だから

欲しいものは何でもあげる
望むことは何だって叶えてあげる
道化になることだっていとわない

だから、笑って

あなたは僕の幸福だ
あなたは僕の光だ
あなたは僕の命だ

僕があなたの障害になるならば
自らこの命を絶ってみせよう

あなたが笑ってくれるなら
僕は何だってしよう

ねぇ、泣かないで

05. 高速

時は一瞬で駆け抜ける
風より早く
水より静かに

一分一秒と進み続ける今まさに
時は動いて駆け抜ける
我らにそれは視認できない
感ずることもできぬだろう

時のあまりの速さに
しばしば我らは置いて行かれる
本来ならば共に行かねばならぬのに
それでも人には限度がある

置いて行かれて
時を忘れて
そしてやっと人は思い出す
もうこんなところまでやってきたのだと

まるで刹那の一刻のように
一年間のことを昨日のように思い出せるのに

時は一瞬で駆け抜ける
風より早く
水より静かに

誰もその速さについていけない

06. 残量

残量はあとわずか
生き残れるのはたった一人
あなたはどれを選びますか?

今にも沈みそうな船の中
酸素ボンベの中はあと少し
一緒に沈んでいる人の酸素をあわせたら
ギリギリ一人生き残れる
あなたはどれを選びますか?

それに加えて水も食料も尽きた
酸素があれば生きれるけど
それでも全員死ぬのは明らか
あなたはどれを選びますか?

みんなの酸素を頂いて
一人だけ生き残る?
みんなの食料を頂いて
一人だけ生き残る?
それともみんなと一緒にゲームオーバー?

残量はあとわずか
生き残れるのはたった一人
あなたはどれを選びますか?

あ、残量切れた

07. 数字


 何もない、虚無、動かない、中立


 始まり、唯一、独り


 対、無二、陰陽


 デルタ、シズ、ピラミッド


 死、箱庭、死神


 中立、相対立、ヘキサグラム


 サタン、人間、愚か者たち、ペンタグラム


 完全数、天使、悪魔

………
……



 無限、すべて、流動体、中立

08. 記憶

古い記憶をさかのぼっても
得られるものは何もなく

ただ昔の映像をテープのように
巻き戻しては再生するだけ

記憶など何の意味もなく
価値もない
それでもどこか
必要な気がしてならないもの

所詮全てはデジタル化されたもの
何の感嘆もない

永遠が欲しかった
永遠と呼べるものが欲しかった
記憶を永遠にしたいと思った

でも、今は
この様だ

古い記憶をさかのぼっても
得られるものは何もなく

だから帰りたいと思う
記憶がメモリーではなかった頃に

09. ID

名前なんていらない
認識できる番号でいい

名前に何の意味がある?
名前に何の価値がある?
名前など持っていても
呼ばれなければ意味などないのに

そんなものなくていい
そんなもの必要ない
IDで充分だ

他人がどう言おうとも
オレはこの考えで満足してるんだ

だからもう
名前なんていらないよ
次からは
オレのこと
機械みたいに
部品みたいに
IDで呼んでよ

名前なんて、いらないからさ

ID…自己証明・身分証明・ETC...

10. 再生

この世界が再生したとして
一体何になるというの?

こんなボロボロの世界を再生して
一体何の役に立つの?

どこまで巻き戻しても
結局は破滅の道しかないのに

再び生まれたとしても
それは0からのスタートではないのに

結局、すべて無意味

どれだけ繰り返そうとも
無意味だとしても
経験値は貯まっていくのだし

まるで完成された箱庭のよう
気に入らないのならすぐに崩される

そこで泣く人はいるのに

この世界が再生したとして
一体何になるというの?

泣いた人がいるという事実は変わらないのに

何の意味があるの?



配布元:BERRY