■ 其の五 ■

01. うたかた

夢を見たわ
夢を見たの
とっても嫌な夢だったの
あなたが死んでしまう夢
ねぇ 本当は
どっちが夢なの?
あなたは知ってるはずでしょ?
ねぇ こっちが夢でしょ?
あなたが死んだのは本当
ここにいるあなたは幻
これこそがうたかたの夢
私は夢から覚めるわ
さよなら

さよなら うたかたのあなた

02. 乾いた道

小さな私は乾いた道を歩く
乾いた道は陽射しにひからび
じりじりと焦げていく

焦げた道はいつまでも乾いたまま
乾いた道はいつまでも焦げていく

私が踏みつけた乾いた道
暑くないかと尋ねれば
暑くないよと答えた

暑くひからびた乾いた道
道なき道を 私は行く

03. 合わせ鏡

合わせ鏡をしましょうや
幽霊さんの通り道
合わせ鏡をしましょうや
そしてそのまま放っておいて
合わせ鏡をしましょうや
あなたを不幸に
あなたへ不幸を

04. 微熱

あなたの微熱は下がらない
私の微熱も下がらない

あなたの微熱が私の為のものじゃないなんて
もうとっくの昔に知ってたわ
ありがとう
それでも私の傍にいてくれて
あなたが私の傍にいるのは苦痛でしかなかったでしょう
ありがとう

私の微熱はあなたの為のもの
なら早く
あなたは私から離れなきゃ

私の微熱は下がらない
あなたの微熱も下がらない
かなわない恋なんてするものじゃないわね

05. 子守唄

優しい唄を歌いましょう
哀しい唄を歌いましょう
寂しい唄を歌いましょう
あの子が寂しがらないために
あの子が泣いてしまわないように

06. 吐息

あなたの吐息を感じさせて
あなたの吐息は甘いもの
あなたの吐息を感じさせて
それは私のごちそうよ

あなたの吐息を感じさせて
吐息一つまで 私のもの

07. 石楠花

赤の花や 赤の花
汝 何処に咲き誇る
汝 何時咲にける
その身に威厳を持ったまま
汝 何処で散りにける
赤の花や 赤の花

石楠花や

08. 陽炎

そこにいるのにそこにいない
まるであなたは陽炎ね
ゆらり ゆられて
消されて 消えて
ホントのあなたは一体どこ?

ホントのあなたは、一体どこ?

09. 四角い青

水槽の中の青はいつだって閉鎖的で
いつだって怖い
閉じられた青はいつだって寂しく
いつだって冷たい

四角い閉じられた青色
溶かされることは、ない

10. 禁忌

この行為はいけないこと?
この行為 私好きよ

私たちは兄妹よ
でもだからどうしたの?

兄妹だから愛しちゃダメなの?
兄妹だからSexはダメ?
ちゃんと避妊してるのに?
だからダメなの?
愛しちゃダメなの?
愛し合うことだけで禁忌なの?

兄妹でのSexはいけないこと?
この行為 私好きよ

11. 墓地の足跡

足跡一つ 二つ 三つ
お墓の中へ続いてる
もしかしたらゾンビさん?
それともただの墓参り?
墓参りなら楽なのだけど
ゾンビならイヤだな

でもボクはそこに行かない
だってボクは怖いもの

12. 切れないハサミ

切れないハサミ
さびついたハサミ
早く研がなきゃ
よく切れるハサミにしなきゃ
じゃないと首が切れないわ
早くしないとあの人が帰ってきてしまう
早くしないと
あの人が帰る、それまでに――――

13. 耳鳴り

うるさいわ
うるさいわよ この耳鳴り
誰か治してちょうだいよ
どこの誰がこんな『音』出してるんだか
ドアの前から『音』が聞こえる
あそこね 騒音の元は
でも開けるわけにはいかない
何をされるかわからないもの
さっさとどこかに行ってよ
私に何のようかは知らないけど
私は外に出ようとは思わない
だからさっさとどこかに行ってよ
お願いだから 早く

あなたのせいで
耳鳴りが止まらないじゃない

14. 祈り

とても無意味なもの
祈りは届かない
だけど祈る人はいる

祈りは届かない
永遠に

15. 世界

私の世界とあなたの世界は違うわ
あなたの世界を見せないで
私が壊れてしまうじゃない
私は変わってしまうのが怖い
だから見せないで
世界を見せないで
今の状態が一番いいの
あなたの世界を見せないで
あなたの世界(ココロ)を見せないで
私の世界は私の世界

私は変わりたくないのよ

16. 落ちた星屑

twincle star
silent night

輝く星は静かな夜に落ちてきた

twincle star

寂しい寂しい輝く星
独り落ちてしまいました

silent night

それでも静かな夜は
輝く星を癒してくれました
沈黙という名で

twincle star
silent night

だからもう輝く星は寂しくありません
もう二度と
夜の闇に溶けなくなったのですから



配布元:16の御題