呼び声
ver.pop'n music
[[ スマリデ ]]


「ねーねーリデルー」

 ある日、リデルが昼食を作っていたところスマイルが声を掛けてきた。
 本来ならばここにいる筈のアッシュは、本日はポップンパーティの関連で現在MZDに呼び出しを食らっている。

「何かしら、スマイル」

 嫌に上機嫌なスマイルに首を傾げながらリデルは尋ねた。確かにいつも同じようなテンションだというのに、今日はいつもと比べて輪を掛けてテンションが高いような気がする。
 いや、どちらかというとこれは悪戯を思いついたときのような声色だ。

「あのねー」

 嫌にもったいぶった言い方をする。これは本当にただの悪戯の時の声だ。そう言うときのスマイルは一様にして内容をもったいぶる。

「だから何だというの?」

 さっさと言わないと料理に戻るわよ、と有る程度の脅しを掛けてみるとようやくスマイルが口を開いた。

「裸エプロンってよくない?」
「……………は?」
「いや、だから裸エプロン」

 裸エプロン、という言葉をリデルは一度も聞いたことはないが、その単語の意味は何となく理解は出来た。
 リデルはスマイルが何を言いたいか分かっていても、一応尋ねた。

「それが、どうしたというの?」
「やらない? リデル」
「やらないわね」

 これで話はお終いとばかりに一刀両断し、調理を再開させるリデル。スマイルの方など見向きもしない。
 後ろからはスマイルのブーイングが聞こえる。

「リデルやってよ」
「誰がやるものですか。お前は意外とアブノーマルなのだから、全部についていったらこちらの身が持たないわ」
「四十八手だけじゃ飽きたんだけど」
「あれでよく飽きるわね、お前…!」
「でもSMはする気にならないし」
「簡易ならよくさせられる気がするのだけれど」
「目隠しとか縛りはOKだからねー。リデルが痛くないし」
「確かに痛くはないけれど…」
「それにリデルは痛いのならどこまでも耐えれるから」
「自分で自分の体を切り裂いて心臓を取り出すくらいなら平気よ」
「それ以上の苦痛って中々ないけどね」
「そうかしら」
「そうだよ、別の物が快楽に変わるのはあるけど」

 当たり前のように続けられるアブノーマルな会話。だがそれと同時にリデルの手の中で作られ続ける食事達。会話内容が一見ほのぼのとした光景をぶちこわしにする。

「…んー、じゃあ今日は苦痛じゃなくて快楽にしようか。どこまで耐えれるかなぁ?」

 ヒッヒッヒッとスマイルが特有の笑い声を上げる。愉悦を含んだそれにリデルは視線を尖らせた。

「………スマイル」
「だいじょーぶだよ、………壊さない」

 そこに絶対という言葉がないのはスマイルの誠実さなのか。

「だけど壊れたらリデルは永遠に僕のものになるから。ちょっとだけ残念かなぁ」

 小さく呟かれたその言葉は明らかに真剣な声色を帯びていて、リデルはほんの少しだけ愉悦を覚えるのだ。



---
スマリデ編。
狂気と正気の綱渡りをしているのがスマイルで、
正気のままそれに付き合ってあげるのがリデルさん。
まあどっちにしても二人ともあんまり正気じゃないよと。
ちなみにスマイルはS。リデルは痛みに強いノーマル。若干M。