呼び声
ver.pop'n music
[[ ミシェオフィ ]]


 ミシェルはほんの少し疲れていた。
 といってもそれはほんの少しなので、普段の物と全く変わらないと言っても過言ではなかっただろう。
 というわけで、これからまだ動くことは可能だ。とりあえず頑張ってみようか。

「ミシェル」
「あ、オフィーリア。どうしたんだい?」

 ふわふわと宙を浮いて、ブルネットの彼女がやってくる。ミシェルは仕事に動き出そうとした足を止めてオフィーリアに尋ねた。
 彼女はクッキーの缶を持っていた。

「それ、どうかしたのかい?」
「リデルが持って来てくれた」

 スマイルと一緒に、とついでに付け足す。いつもの差し入れだろうか、本来ならミシェルもオフィーリアも食を必要としていないがそれはそれとしてありがたかった。

「じゃあ食べようか、オフィーリア」
「うん」

 食べることを必要としない二人だが、決して食べられないわけではない。しかし元々食べるということを欠いていたミシェルと食べるということをそもそも本能だと認識していないオフィーリアの間では、何か食べる物が無い限り食べようとはしなかった。
 図書館の整理を一時中断し、ミシェルはお茶を用意する。お茶請けはそのクッキーでいいだろうし、元々オフィーリアもそんなに食べない方だ。多くの物は用意しない方が良い。

「はい、オフィーリア」

 オフィーリアに紅茶を出す。ミシェルはそれを受け取ったのを確認して、ようやく椅子に座って休憩を取るのだ。

***

 そしてそろそろお茶が切れてきて休憩も終わりにしようとミシェルが考えていた頃、オフィーリアがミシェルに無言でカップを差し出す。

「ええっと…オフィーリア?」

 これはお茶を注いでということなのだろうか。しかしオフィーリアもお茶が切れているということは気づいているのだが。
 だがオフィーリアの手が引き下がることはない。ミシェルも困ったようにその手を見た。

「まだお茶飲みたいの?」

 優しく問いかけると、オフィーリアは首を横に振った。
 ミシェルは目を丸くする。だとしたらどういうことなのだろうか、お茶が飲みたいのだからこそカップを差し出しているのではないのか。

「……お茶はいいの」

 念を押すようにオフィーリアは呟いた。それ以外の理由があるのだと明確に告げて。
 そして彼女は小さく告げた。

「…………ミシェルと一緒にお茶を飲みたいの」

 それは多分、ほんの少し疲れを見せていたミシェルに対する彼女の優しさ。
 ミシェルは柔らかく笑った。

「うん、そっか。ならまだお茶にしようか。新しいお茶を入れてこよう」
「ペパーミント」
「分かった。今度はそれでね」

 そしてミシェルはポットを持って立ち上がる。動いているのはミシェルなのだけれど、ミシェルには彼女の優しさがとても愛しかった。



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ミシェオフィ編。
ほのぼのな二人。
ミシェルを休ませてあげたいのだけれど、
オフィーリアが何かをする度にミシェルが動くことになるのはお約束。