呼び声
ver.pop'n music
[[ ヴィルシャル ]]


 最初から眠る必要はないのだもの
 眠ることも忘れて
 踊り続けているわ
 ああ いつもおとがながれる

 球体間接人形は踊る。
 今日も主の帰りを待ち続けて踊り続けるのだ。
 くるくる回る。くるくる踊る。踊りながら歌う。主のために踊り続ける彼女は、その螺子が終わる、もしくは壊れるまで踊ることを止めない。
 キリ、キリと。
 小さく微かな、歯車の鳴る音が響く。

 やさしく うたうのに
 ここには あなたは

 彼女の主はいつ帰るとも分からない。だがそれでもいいと言ったのは彼女だ。
 戻ってくるのはしばらく後だ。それまで屋敷には一足も戻ってくることはないだろう。螺子を外してやろうか。
 彼女の主は遠出のときは彼女の螺子を取り外そうとするが、それを止めるのは彼女の役目だ。
 待つことこそが人形の幸福。いつまでもお待ちしています、ヴィルヘルム様。
 錆び付いた体で彼女は笑う。
 彼女の主はいつまでもこの問答を繰り返す。

 あなたを待ってる
 いつだって きかざって
 ふたつ ひらかせて
 きれいね きれいね

 機械仕掛けの人形はいつだって綺麗でなければならない。主を安らかな気持ちへと導かせねばならない。主を楽しませねばならない。主に癒しを捧げねばならない。
 だけど彼女の主はいつだって、踊り続けている彼女を見て安らぎを得てはくれない。どちらかというと迷惑そうだろうか。
 彼女はそれが分かっていても、それを解決することは出来ない。
 この身は踊り、歌い、主を癒すために作られた球体関節人形。必要最低限の機能しかつけられていない。
 元々人間だったとしても、それは変わらないのだ。
(だけどそれでよろこんでくれるなら)
 踊り続ける彼女を見る度に迷惑そうに顔を歪ませる、何だかんだ言って彼女のことを甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるあの人が、彼女に構ってくれるようになるのなら。
 ついでに笑顔を見せてくれるようになるのなら。
(きっとなんだってする)

 あなたはほめてくれた
 いつも笑いかけて
 ほら みてみて


(ヴィルヘルム、様)


 球体関節人形は、今宵も主のために踊り続ける。


*「おもちゃばこのロンド」逆再生版歌詞使用



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ヴィルシャル編。
あまり屋敷には帰っては来ないけれど、
人形を大事にする幽玄伯爵と元貴族のお人形。
人形は主が一番であり、主以外に何もいらないのだ。