出会いと別れ。そして始まり。
ver.Original


「残念だったけど、」

 少女が口を開く。鮮やかな白き衣は既に原型を留めておらず、白き肌には砂と血で彩られていた。
 流れた血はどれだけのものか、少女は全身から血を流しながら、朝焼けに照らされながら笑う。

「貴方、私の救いだったみたい」

 白い衣が風に舞う。その姿も、足から徐々に透けている。だからその顔は笑ったままだ。穏やかに、微笑んだままだ。
 その様子を見て分かってしまった。少女は全てを分かっていながら、それすらも己の糧として全てのことを成し遂げたのだ。
 最初から全て分かっていながら、全て分かっていたからこその笑みを少女は浮かべる。

「…分かっていて、やったのか? 全部、分かっていて」
「勿論。何を今更言っているのよ」

 少女はいつも通りの快活さを見せた。こちらはそれに俯くしかない。そんなことを言われても、自分はどうしたらいいのか分からない。

「…あのね」

 俯いている自分に、少女が声を掛ける。囁くような、その声。決して顔を上げることはない。

「顔を上げてって、もう」

 無理矢理顔を上に向けさせられた。少女の瞳を視線がぶつかって、少女の笑みがより一層濃くなった。己の顎に掛かった手も、半分以上は透けていた。
 それでも少女は笑うのだ。


「さようなら、ありがとう。
 私、きっと貴方のことが大好きだった」


 そして少女は笑いながら消え去ってしまった。
 後には、何も残らなかった。