クリークケーニヒ
あるところに一人のお姫様がいました。 お姫様の国は昔から他の国と戦争ばかりしていて、国はいつでもピリピリとしていました。そのせいかお姫様もお世辞にも穏やかでたおやかなお姫様だとは言えませんでした。 いいえ、それよりもっと酷い。お姫様は生まれたときから父親である王様に武術馬術軍術を徹底的に教え込まれ、王様はお姫様を戦神へと作り替えたのです。 幼かったお姫様はそれを嬉々として受け入れ、王様の理想通りの軍神へと成長していきます。そして成長したお姫様は、敵国にどんどん攻め込んで、全ての戦に勝利していきました。 お姫様の国はお姫様の功績でどんどん強大になっていきます。 ですがお姫様の国は強大になったとはいえ、所詮それは武力によって作られた国です。お姫様に負けて吸収された国からの不満はどんどん高まっていきます。ですが王様は取り合おうとしません。 そしてついに、お姫様の国に吸収された各国は同盟を作り、お姫様の国を滅ぼそうと一斉に軍を進めてきました。 お姫様は守りました。お姫様はやって来る大軍をどんどん薙ぎ払っていきました。どれだけ味方が死んでも、どれだけ傷だらけになろうとも、いつの間にか自分の軍が自分一人になろうとも、お姫様は国を守る為に戦いました。 でもお姫様がどれだけ頑張っても、お姫様は絶対に勝てません。そもそも数が違うのです。お姫様の軍を百とするならば、彼ら連合軍は千、もしくは万の値なのです。 お姫様が倒れるのは、時間の問題でした。 そしてお姫様は倒され、国は倒れ、 お姫様は、南の塔に幽閉されることになりました。 それが戦争の結末。 ほんの少し前に起こった、「クリークケーニヒ戦争」の結末でした。 「貴女の処刑が決定しました。一週間後です」 王城からの使者が淡々と紡ぎだした言葉を、私は凪いだ心で受け入れた。 「了解しました、一週間後ですね。それまで、わたくしはここで何をすればよいのでしょうか」 そう、それが問題だ。自分が死ぬのが一週間後と分かっていても、私にはすることがない。ただ暇を持て余せ、というわけではないだろう。 しかし、私の心を揺すぶったのは、次の言葉だった。 「貴女は、この塔からの外出を許可されました」 「…え?」 呆けた声。まるで自分の物ではないかのように。 「我らの最後の慈悲です。…それでは、最後の一週間をお楽しみください」 男が退室をする。私は、それを見ていることしかできなかった。 Next to...?
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