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「ここは僕の縄張りだよ、何勝手に荒らし回ってくれてるの?」
「ひ、ヒバリさん…」

 ツナは怖ず怖ずとその名を呼んだ。ヴァリアーとの対決でこんな風に荒らされ回った校舎を見て、ヒバリがどのような反応を見せるかなど手に取るように分かる。

「全員咬み殺してやる」
 そう言ってヒバリは愛用のトンファーを構えた。

 やっぱり。ツナは瞬間的にそう思った。
 この人は自分の縄張りを荒らされるのが嫌いだ。自分の物に自分以外の誰かが傷つけるのがとても嫌いだ。…まあ、そういうのが好きだという人も珍しいのだが。
 かといって、自分の八つ当たりのために自分の物と認識した物を傷つけるのだが(標的は今のところツナだ)。そして勿論自分の物と認識していない物も傷つけるのだが。基本的に勝手で傍若無人で子どものような人だ。

 しかしそのヒバリの行動も審判である彼女たちに止められ、ヒバリは舌打ちをしながら構えたトンファーを下ろした。珍しい。誰かの言うことを聞くような人じゃないのに。

 そしてすべてに対してやる気を失ったヒバリはそのまま帰るかと思われたが、意外とそうでもなかったらしい。ツナの方に向かってくる。

「え? ヒバリさん?」
「君、この戦いの責任者だよね?」
「…え?」

 突然言われた言葉にどう反応して良いのか分からなくて目を丸くする。確かにこの戦いはボンゴレのリングを巡っての戦いなので一応ツナも責任者の一人になるのだろうが、ここは肯定してしまってもいいのだろうか。

「ここ、こんなに荒らされてるけど元に戻してもらえるんだろうね?」
 ヒバリはツナの反応を既に予測してあったのか、リボーンに向かって尋ねた。

「おう、安心しろ。ここは全部ボンゴレが責任もって直してやる」
「そ、ならいいよ。安心した」
 その点に対しては興味がなくなったのか、ヒバリはリボーンからツナに視線を戻した。

「ヒバリ、さん?」
「この学校は僕の物だ」

 ツナの呼びかけなど無視してヒバリは言い切った。それはそうだろう。この学校…いやこの辺りすべてを統治しているのは風紀委員長であるヒバリだ。この学校が彼の物でなかったら誰の物だというのか。
 ヒバリの視線が真っ直ぐにツナに向いている。彼はツナを睨むように目を細めて正視する。

「そして君も、僕の物だ。…傷でもつけたら許さないよ、綱吉」

 それだけを告げるとヒバリはツナの隣をすっと横切り、外に出て行ってしまう。恐らく行った場所は屋上だろう。彼は意外と高い場所が好きだ。

「…相変わらず、気障な台詞ですねヒバリさん……」
 きっと本人には自覚なんてさらさらないのだろうけど。
 聞いているこちらからすればその台詞は気障そのものだ。

「よかったな、ヒバリにもああ言ってもらえて」
 足下からリボーンの声。
「嬉しいのかどうか分かんないけどね…」

 ツナは乾いた笑みを浮かべる。あれでも一応、こちらのことは応援してくれているのだろうか。そうだったらいい。そうだったら嬉しい。
 ――――これでツナも一応、生き残る気力だけは出てきた。

「よっし、じゃあ行くぞ」
 リボーンがみんなのところに連れて行く。みんなはもう準備万端といった様子だった。

 この穏やかな空間を壊さないためにも、彼との約束を守るためにも。
 さあ、すべてを始めよう。

 そしてツナは歩き出した。

***
再び本誌ネタ。
しかし本編のような雰囲気を出せないのは何故だろう…。