the fools
1.5/death and twinklestar



「この度…いや、これまでの数々の告死、ご無礼をお許しいただきたい。我ら中立がこの世界の神に唆されあなた方を告死しようとした行為、それは万死に値する行為だとは承知済みです。しかし、これよりあなた方を狙うことはございません。お許しいただけるでしょうか」

 何故か突然馬鹿丁寧な口調になった女は頭を下げたままだ。私はしばし顔をしかめるも、隣の王子様に肩を叩かれて視線だけをそちらに向けた。

「つい先ほどの話は聞いていたのですが、僕には何のことやらさっぱり分かりません。説明は可能ですか?」

 そういえば忘れていたが、王子様はこの手のことにはズブの素人だった。当たり前のように神なんてつかせているからてっきり知識は豊富なのかと思っていた。
 だが、知らないというのならば仕方がない。私と共に旅をする上での必要な知識だ、説明するに越したことはない。

「とりあえず、コレが告死天使アズラエル。ついさっきの死神達の統括者。昔から私を狙っていた一派の親玉。」
 何の前置きもなく淡々と女を指さして私は言葉を紡いだ。王子様も納得したように頷き、女は頭を下げたまま、男はさっきよりも強い殺気を込めて私を睨みつけていた。全てを無視して私は続ける。

「死神というモノは名前の通り、死を司る者達のこと。魂の回収係という役割も担っているわね、ちなみにこの世界だけのものだけじゃない。で、その特異性からソレは何がどうあっても中立でなければならないという制約がついている。が、この女の言葉通り、どっかの誰かがこっちの世界の神に唆されて、昔から私を殺そうとしてたってわけ。」

 一つため息をついた。本当の本当にコイツらには昔から苦労ばかりさせられていた。そういえば何時コイツらが死神だと気づいたのか、それすらも忘れてしまった。
 私が思考の海を漂っていると、よく通る女の声が聞こえた。透明で無垢、そして明朗快活な。

「ノワール、それはあなただけではない。隣のシュバリエ・フェイラート・フロレンスも同様に狙われていた。」

 ピリ、と隣の気配が変わった。放たれた殺気は隠される筈もなく、頭を上げた目の前の女に向けられている。何か心当たりがあるのだろう。どうもこの女は嘘をつけない性格らしい、誠実と言えばいいのか馬鹿正直と言えばいいのか判断がつきかねるところがあるが言っていることは全て事実だ、その点においては信用できる。

「どういうことですか。」
「そのままの意味だ。ノワールは能力の向上の為に、お前は真実その命を狙われていた。この世界の神は既に知っていたのだと思われるな、お前がそこにいる神を宿すことを。」

 そしてお前達が何を成すのかを、声にならない声が丁度キリがいる辺りを指して呟かれた。
 初めて教えられた答えに声が出ない。やはりそうではないかと思っていたのだ、神を盲信していた昔ならともかく裏切られた今ならどんなに考えてもその答えにしか行き着かなかった。そして酷く納得したものだった、あぁやはりと。

「だが、シュバリエの方は早々に打ち切られる。盗賊をけしかけてお前を殺した時に、そこの神が目覚めたからだ。あれは迂闊だとしか言いようがない。」
 いつの間にか戻っていた口調で、女は冷静に淡々と判断分析批評をしてみせた。確かに明らかに迂闊だとしか言いようがない、宿り主の体に危機が迫れば目覚めて身を守るのは当然のことだろう。

「…だそうですよ、キリ。感想としてはどうですか?」
『やっぱりアイツら馬鹿ねー、んなことされれば寝汚さは随一のアタシだって目ェ覚めるわよ。』
 二人とも呆れたような視線が混じっている。それは当然過ぎる程当然なので捨て置くとして。

 じっと、女の瞳を凝視した。女の心を見透かそうとある種躍起になりながら見つめている。
 そうすると、やはり女は笑うのだ。酷くおかしそうに、何が楽しいのか分からない程楽しそうに。
 …思わず脱力してしまった。凝視を取りやめて、今度は真っ直ぐに女を見た。

「詫びを入れにきただけ?」
「…そのつもりだが?」
 まだ他に何かあるのかと言わんばかりの、不満げではないが純粋に疑問の表情を浮かべて小首を傾げた女。実はそれがあるのだ、なければ困るのだ。この馬鹿正直には分かりはしないだろうが。

「詫びを入れに来たって言うのなら菓子折りでも持ってきなさいよ、それがないなら私に情報を与えなさい。」

 必要なモノ、必要でないモノ、たくさんある。目の前のコレは使えるモノだ、そして今詫びに入れに来ている。交渉の価値はある、今使わないでいつ使うというのだ。
 王子様は柔らかく楽しそうに、それでいて腹黒そうに笑っている。キリは頬をひきつらせて信じられないようなモノを見る目で見てくる。男はため息をついて明後日の方を見ているし、女はぽかんと口を開けて呆けた表情を浮かべていた。

「別に死神に協力を乞うつもりはないわ、それじゃ神様と同じだもの。誰かを殺してほしいと願うわけじゃない、私に必要なモノは情報よ。本当に……本当に些細な情報よ。」

 それはまるで笑ってしまうような。

 最後の言葉は声になることはなく、胸の内にのみ仕舞われた。
 女は私の考えなど見透かしているかの如く笑う、私の望むモノが分かっているかの如く笑う。真実見透かされているかどうかなど知ったことか。私は私のほしいモノが手にはいるのか、それだけが重要なのだ。

「…情報か。うん、多分、それは私しか知り得ないようなモノなのだろうね。」
 女は馬鹿正直で素直だが賢い。幼さとはまた別の素直さであり、女は非常に大人びた存在なのだ。私には届かないような存在でもある。

「生憎私は力仕事とごり押しが得意、そこの神は隠密行動がメインだし王子様はまだ旅に不慣れな素人。情報源が必要なのよ。
 …どうするの? 飲むの、飲まないの。」

 女は絶えず微笑んだままだ。辺りを見回して何かを確認したかと思ったら、女は男を見て一度頷き、男はため息でそれに答えた。そして、女に視線を戻し、居住まいを正した。

「死神、いや告死天使アズラエル自体はそれに応えることはできない。…が、友人としてなら応じよう。それで構わないか?」
「上出来よ。」

 女の笑みにこちらも笑顔で答えた。ただし、女の淡い華のような笑みではなく、勝ち気で小悪魔、むしろ邪悪な悪女の笑みで迎え討った。

「ならば友人として名乗ろう。白純唯だ、よろしく。唯と呼んでくれれば嬉しい。」
「ノワールよ。」

 愛想もへったくれもない簡易の自己紹介。あまりにも素っ気なさ過ぎるかと思ったがこれくらいで丁度いい、私は誰にも媚びたりしない。

「それで? 何を求める。」

 口を開く。声に出せばいい、出したらいいのに声が出ない。開いては閉じ開いては閉じ、まるで私の口は魚のようだ。まだ認めたくないという思いが強いのか、それが事実であるということに変わりないのに。
 言わなければならない、でも言えない。複雑な思いが錯綜し続ける。私の口は未だ開いたり閉じたりを繰り返したままだ。

 …ふとそんな時、王子様の声が脳裏によぎった。


『僕はもう受け入れました。―――貴方は?』
『受け入れる受け入れないの問題じゃないのよ、―――受け入れなければならないの。』


 そして受け入れていない結果がコレだ。無様としか言いようがない、―――だが受け入れなければならないのだ。
 いつの間にか閉じていた瞼を上げた。一度だけ奥歯を噛みしめて、胸のしこりと共に言葉を発す。

「私の知り合いは、何人生き残っているの?」
 私のせいで死んでいった友人達を悔やむのはこれで最後にしよう。もし次があるのだとしたらそれは神々を滅ぼしたその後だ。

 女は無言で小さく頷いて、男に渡していた鎌を受け取った。白銀に輝くソレを天高く掲げ、何かの儀式の如く瞳を閉じた。

「…正確な数は分からない。だが、けして、多くは、ない。」

 一言一言、噛みしめるような言葉だった。

「そもそもどの世界にも死神に打ち勝つ人間など早々いない。…だが、あの男は生きているな。」
 天を突く鎌を大地に付け、さっきの言葉とは裏腹に平然とした表情で女は呟く。

「誰?」
「一番最初の犠牲者の息子。…覚えてるかな?」
 目を細めて、イタズラじみた顔でなぞなぞを出すが如く笑う。

「…あの男、」
 思い出せるのは黒髪と黒い瞳。身を包む漆黒の鎧。あの人を頼むと私に声をかけた、母親によく似た、王子様とは別のタイプの白皙の青年。

「ここでははっきりとしたことが分からない。情報が必要になったら私の名を呼べばいい、私が忙しくてもこの鴉が行くから大丈夫だ。」
 女が後ろにいる男を前に押し出して、私に見えるような位置にたたせた。

「アンタまた俺をパシらせるつもりか?!」
「勿論、お前は私の使い魔兼部下だ。」
 がくりと肩を落とした男。何の因果でこの女の使い魔になったのかは知らないが、それ自体が不運であったとしかいいようがない。

「それで、お前はいつまでそれを着ているんだ?」
 女は鎌の刃の部分を私―――いや私の服に向け、微笑みから人を食ったような笑みに変化させた。

「あの塔にはこれしかなかったのよ。」
 私が着ている服は白一色の薄いワンピース。丁度女とは髪の色や瞳の色などで対称色となる。

「あぁ、そうだろうね。だからコレをあげよう。」
 女の鎌が音もなく白銀から漆黒に変わったと思いきや、ふとその刃が微かに私の服を切り裂いた。
 突如として変わる色。純白から漆黒へ。不本意ながら着ていた服が私の望むモノになった。

「それは私からのプレゼントだ。使い勝手はいいから適当に使ってくれ。シュバリエの方は構わないな?」
「勿論。ありがとうございます。」
 王子様との会話が耳に届く。

 黒、それは私にとって馴染み深いモノ。そして、神に弓引く者の証。
 白、私が今まで着ていた色。神に忠誠を仕えた者の証。王子様は白だがまた別の意味があるのだと言った。

「礼は言っておくわ、ありがとう。」
「どういたしまして、気に入ってくれたようで嬉しい。」
 隣の王子様が何を思ったか微笑ましそうに私たちを見ている。一体何なのだ。

「これでお前は『ノワール』だな。『ブランシュ』が混じっていては『ノワール』にはなりきれない。」
 皮肉のつもりなのだろうか、むしろ天然で言っているとしか言いようがない。いや、むしろただ事実を述べているだけか。別に気分を害すことはないから構いはしないが。

「コラ、アンタもう時間ないぞ。次の仕事が待ってる。」
 私の目の前で、女の後ろからぬっと長い腕が伸びて、女の頭の丁度つむじの辺りを小突いた。女は振り返る。

「…あぁ、もうそんな時間か。次の仕事は何だったかな…?」
「いつも言ってるけど、覚えとけよアンタ! 次の仕事は書類審査だっつーのッ!」
「…面倒だからもう少しここで喋っていても構わないだろう。」
「アンタは仕事を何だと思ってんだよ! 告死天使がこんなに天然ボケでどうする!」
 私としてはこの二人が上司と部下だという関係は今更ながらに信じられない。天然な駄目上司を持って苦労するまともな神経を持ち合わせた部下といった図か。

「まぁ、どうやら次の仕事が迫っているみたいだ。残念だが、これにて失礼させてもらう。」
 女は体を男に向けたまま、顔だけは私と王子様の方に向けて苦微笑を浮かべ、そして鎌を持ったまま緩やかに一礼。艶やかな笑みに変化した。


「必要ならまた呼べ。私は、お前達のことが好きだから。」

 鎌を振り上げて地に落とした。それを期に、その黒衣には似合いすぎた一対の白銀の翼が現れる。
 真っ白で大きな翼。この女は身に纏う黒衣以外はすべて白で作られていて、私とはすべてが正反対である。
 それを羨ましいとは思わないが、それでも何か胸に引っかかるモノがあるのは何故だろう。

 神に弓引く者として黒として生まれた私、神に仕える白銀の女。


「…大丈夫。」
 女の声が頭上から聞こえた。いつの間にか俯いていた顔を上げたと同時、頭に微かに暖かいモノが触れた。

「お前は『ノワール』だ、そして私は『白純』。何も心配することはないんだ。」
 何を言っているのか、よく分からなかった。心配など私はしていない。

「それとも、後悔しているのか? 神に弓引く者として生まれたことに。今からでもいいから忠誠を誓うか? 多分許しはしないだろうが。」
 からかいの混じった侮蔑の声。目の前が真っ赤になる。プツリと嫌な音がした。


 未だ掴んで離さない黒塗りのナイフ。まずは私の頭に乗せられた何かを、バターのように滑らかに根元から切り落とした。赤色と共に頭上から落下してきたそれが女の手だということに気づいたのは今だ。
 振り上げた腕をそのまま、丁度腕を伸ばした位置にある女の口に血濡れのナイフをたたき込む。

「ッたく!」


ギィンッッ!


「チッ」
 女の喉にナイフをたたき込む前に、女の顔を覆うかの如くナイフと顔の間に差し込まれた女の鎌。持っているのは男だった、さっきの声は男のモノか。忘れていた。軽く舌打ちする。

「テメェ、シュバリエ! この暴走女止めろよッ!」
「嫌ですよ、僕はノワールさんの好きにさせるようにしてるんです。」
 遠くで、だけど近くで会話が聞こえる。ひどくそれは遠く。


「後悔などするものかッ! 私は恐れない私は逃げない。あんなモノに忠誠を誓うくらいなら死んだ方がマシよッッ!」


 吐き捨てるように、血反吐を吐くように。こぼれ落ちる砂の中から赤色を探して。


「それでいい。」
 多大なる痛みを持っている筈の女は軽やかな鈴のような声で、平然とした声を響かせた。

「お前はそれでいいだろう、ノワール。迷う必要はないとは言わない。ただ進めばいいと、私はそう思うよ。」
 流れる血を抑えることもなく、笑いながら言う女。
 切り落としていないもう片方の手で、宙に浮いたままもう一度私の頭を撫でた。

「シュバリエ王子、いや『騎士』殿。この子はこういう風に不安定になることが多いから、これからは支えてくれないか?」
「言われずもがな。その為に僕はここにいますから。」

 私の黒い服についた女の血は既に消えて失せ、以前のままの形態を保っている。髪の毛と顔にはまだ血は残っているが、使い勝手がいいということはこういうことか。
 しかしコレは私の母親か姉代わりなのだろうか、初めて会ったにも関わらず。しかも受ける王子様も王子様と思うが。
 目の端では鎌を持った男が、女の手首を拾っている図が見えた。

「馬鹿でしょう、お前。」
「よく言われるよ。」

 やはり女は笑っている。笑い続けたままだ。滴る血が水たまりを作っている中、女は男から手首を受け取って、その手首をそのまま切り口にぴたりと合わせた。

「…うん、大丈夫だ。」
 くっつけた手首を回したり、指を伸ばしたり折ったりして様々な確認を終えると、もう一度笑った。

「もう一つ餞別だ。」
 まだ何か情報をやろうというのか、馬鹿正直で素直な上にお人好し、ある種救いようがない。

「神もいずれ死ぬのだよ、すべての命ある者は死ぬ。だが、お前達は違う。
 お前達は一度死んだ身、既に輪廻から外れている状態だ。…どういう意味か、分かるな?」

 女を見上げずに、女の残した血だまりをじっと見つめていた。つまり、それは、
 女は沈黙を肯定ととったのか、もう一度私の頭を撫でてその手を離した。上空で翼のはためく音がする。

「ノワール」
 呼ばれる。顔を上げた。


「頑張れ、きらきら星。」


 発せられた言葉と同時に、光が溢れた。眩しさの中で、目を焼かれるなどの不安は全く感じないで、瞳を開けていた。男女が、存在ごと掻き消えて行くのが見えた。


「ノワールさん」
 光が消えて数秒、光の残滓を指ですくった。

「傍迷惑な奴らね…」
 とりあえず、それが第一の感想だった。

「いい人ですよ、二人とも。」
「そんなことは分かってるわ、だからこそ傍迷惑なのよ。」
 きらきら星、とあの女は言った。それは皮肉なのか、事実なのか。それすらも今の私には分からず。

「僕も、惑う必要はないと思いますよ。ノワールさん」
「…分かってるわよ。」

 王子様の言葉にため息が出た。そんなことは、既に分かっていた。それでも惑う心は、止められないのだ。

「既に僕らに普通の道は残されていません。―――進むしかないんですよ。」
「…それも、分かってる。」

 それでも考えてしまう。普通に生きていた日々、あの日々が続けばどれだけ幸福だっただろうか。私の周りの人間は死なず、ただの村娘として生きていく道。この王子にも会わず、ただただ幸福に満ち溢れていた道。

「…昔のことを考えますか?」
「えぇ。でも仕方がないわ、自分で選んでしまったもの。」

 ぐるぐる回る思考回路。止まらない、止めることが出来ない。本来ならあの時、一番最初に拒否してもよかったのだと思う。旅をせずに普通に生きる道は多分残されていたのだ。 それでも道は一つしかないと錯覚して選んでしまったのは私。

「とりあえず、眠りましょう。もう僕らに近づく者はいません。」
「…でしょうね、でも私は眠らない。寝るならお前一人で寝なさいと言ったでしょう。」
「今の貴方でソレを言いますか。頭の中がぐちゃぐちゃになってるのなら眠った方がいいって言ってるんですよ。」
「そんなことは分かってると言ったでしょう。」
 永久に続くと思われた押し問答。どちらかが引かなければ話にならない。

「…全く、」
 王子様がため息を付いて毛布を手に取った。どうやら諦めたらしい、良いことだ。

 王子様が座り込んだかと思えば、腕が何かに引かれた。一体なんだだろうと思ってそちらを見れば、王子様が私の腕を引いている。

「一緒に寝ましょう。」
「寝ぼけるならソレ相応のボケをしなさい。」
 即座に返す。この王子は一体何を考えている?

「はいはい。」
 あしらうような口調に眉をひそめながら、私はバランスを崩して強く引かれた王子様の腕の中に倒れ込んだ。

「何の真似?」
「今の貴方は混乱していますから。あれだけの能力を見せつければ誰も手出しはしません、安全ですから大丈夫でしょう。」

 王子様の腕の中は居心地が悪い。身をよじって腕から抜け出す。真っ直ぐに見た王子様の目は確実に本気だという事が分かって、今度はこちらがため息を付いてしまう。

「…分かったわよ。」
 それだけ言うと、私はただ草の上に倒れ込むように横たわった。その隣に毛布を持った王子様が横たわり、一枚を私に掛け、もう一枚を自分に掛ける。


「twinkle little star…」
 隣から囁く声が聞こえた。私は無言で頷く。


「そうよ、あの女は私たちのことをきらきら星と称した。いずれは強大すぎる光にならなければならない、今以上に。」
「そうですね。」
 互いの顔も会わせずに進んでいく会話。闇に響くは互いの声のみ。


「大きくなってやる。だから着いてきなさいよ、シュバリエ」
「…はい。」


 王子様のひどく嬉しそうな声が響く。
 そういえば、今初めて自分がこの王子様のことを名前で呼んだことに気付いた。



Next to...?
Next to After