本編裏
《 1.ツナが10年後に行っている間の応接室 》 「さて」 沢田綱吉は椅子から立ち上がる。 「それじゃあ俺は行きます。ヒバリさんに会って俺の悩みも解決しましたし、そうしたらやるべきことは一つだって分かりましたから」 「ふうん、誰を咬み殺すの」 行動とはそれだろう。今までの会話内容からいってそれしかない。 「10年後の俺達の障害になる奴ですよ。今ならそんなに強くないし、殺しておいたらボンゴレが壊滅しかけなくても済む。実は俺、その為にこっちに来たんですよね。それでそいつの名前は―――」 「壊滅? 赤ん坊の組織が?」 「って言っても、今は俺が世襲しちゃったんで俺の組織ですけどね」 ハハ、と乾いたように笑った。どこか疲れた笑みだった。 しかしこの沢田綱吉の組織を壊滅させるだけの強者がいる。これの周りで群れている輩どもも、10年後にはそれは強くなっているだろう。 そんな輩の目をかいくぐって、ボンゴレを壊滅させるだけの強者。 それを殺してしまう? 今なら容易いからといって? 「……面白くないね」 「え?」 もう一度トンファーを振り下ろす。そのトンファーにデリンジャーで対抗されるのは分かり切った結果、合わさった鋼の音が響き渡ると同時に、振り下ろしているトンファーの力を少しだけ抜いて、もう片方のトンファーでデリンジャーを横殴りにした。 鈍い鋼の音が響き渡る。同時に、デリンジャーは雲雀の目算通りに応接室の壁まで吹き飛んだ。 「ひ…ひひ、ヒバリ、さん?」 「君はそれでいいかもしれないけど」 トンファーを一度振るった。ビュ、と空気を裂く音。 「それじゃあ僕がつまらない。遊んであげるよ、沢田綱吉。前哨戦だ、精々楽しませてね」 これは紛れもなく本気だという殺気を滲ませて、雲雀はトンファーを構え直す。この間に沢田綱吉がグローブを付けなければ、雲雀は間違いなく沢田綱吉を殺すだろう。デリンジャーでは話にならない。その為に雲雀は沢田綱吉の手からデリンジャーを吹き飛ばした。 呆然としていた沢田綱吉は、突如思い立ったような表情を浮かべた。 「……そうですよね、ヒバリさんってそういう気質ですよね。あー、すっかり忘れてた」 「10年後だろうと10年前だろうと僕は全く変わらないよ」 「ええ、そうです。ヒバリさんは変わりません」 言いつつ、沢田綱吉はグローブを填めた。元々ミトンだったそれは、今やその形も見えない。雲雀が見慣れているあのグローブだ。 「それじゃあ稽古よろしくお願いしますね、ヒバリさん。ヒバリさんこそ俺を楽しませてくださいよ」 「言うね。精々足掻いてよ草食動物。―――咬み殺してやる」 雲雀は肉食動物のように笑い、そして沢田綱吉はその笑みを懐かしそうに見た。 そしてまず、沢田綱吉が動いた。 |